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1 歯科医師になるには

 歯科医師になるには、歯科医師国家試験に合格して、厚生大臣の免許を受けなければなりません(歯科医師法第2条)。では、歯科大学を卒業しないと歯科医師国家試験を受験できないのでしょうか?

# 歯科医師法第11条に、以下のような記載があります。
 第11条(歯科医師国家試験の受験資格)
歯科医師国家試験は、左の各号の1に該当する者でなければ、これを受けることができない。
1 文部大臣の認定した大学において正規の歯学の課程を修めて卒業した者。
2 歯科医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後1年以上の診療及び口腔衛生に関する実地修練を経たもの。
3 外国の歯科医学校を卒業し、又は外国で歯科医師免許を得た者で、厚生大臣が前2号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有し、且つ、適当と認定したもの。
 これらからすると、現在においては歯科大学を卒業することが歯科医師への道の第一歩のようだ。

 では毎年どのくらいの歯科大の卒業生があって、どのくらいの割合で歯科医師国家試験に合格しているか?
これらは年度によって差はあるものの、平成15年3月の試験を例に取ると、3208名の受験者(新卒・既卒計)のうち2932名が合格。
合格率は91.4%である。 参考: 歯科医師国家試験

 # なお、歯科医師国家試験から実技が無くなったのは、1983年ころではなかったかと思われるが、2005年からは再導入されそうです。
詳細、試験内容などは「歯科医師国家試験の技術能力評価等に関する検討会 報告書(厚生労働省)」を御覧下さい。

まとめ 歯科大学を卒業の後、歯科医師国家試験に合格することが歯科医師への第一歩

 平成15年4月現在、日本における歯科医師免許に有効期限や一定期間毎の書き換えなどの規則は無い。しかし、だからといって生涯免許を持っていられる訳では無い。
 一般的には罰金刑以上に処せられた歯科医師は、厚生労働省の医道審議会に諮られ、医業停止又は免許取消の処分に処せられることがある。これを行政罰と言い、刑事罰、民事罰と合わせた三つの罰のうちの一つである。これらの処分に処せられると、一定期間にしろ歯科医師の免許を失うことになるので注意が必要である。

# 処分の基準の詳細は「医師などに対する行政処分の考え方」を御覧下さい。又、実際の処分例はこちらを御覧頂きたい。

# 今後は医師・歯科医師の生涯研修と免許の更新制度は導入される流れと見ておいた方が良いようである。
 
031201現在の情報では、厚生労働省で医師の免許更新制度を検討中とか。車の免許のような更新制度と医師会を弁護士会のような強制加入団体として、弁護士免許と同じような取扱いにする案があるようです。この場合には医師会を辞めたり除名になると医師免許を失うことになるわけですが、現状の医師会は開業医を中心とした加入活動の実態で、今後勤務医や大学病院の医師も加入することになると、会費の問題や活動など様
々な問題がおきる可能性があります。入会金の問題も大きいでしょうか? 参考: 歯科医療と歯科医師会

     
2 歯科医師になったら

 はれて歯科医師国家試験に合格したら、歯科医籍登録を行わなければなりません。歯科医籍登録に対して、歯科医師法施行令には以下のように定めています。

第1条(免許の申請)
歯科医師免許を受けようとする者は、申請書に厚生省令で定める書類を添え、所在地の都道府県知事(注 一般的には窓口は保健所になっている)を経由して、これを厚生大臣に提出しなければならない。

第2条(歯科医籍の登録事項)
歯科医籍には、左に掲げる事項を登録する。
一 登録番号および登録年月日
二 本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名、生年月日及び性別
三 歯科医師国家試験合格の年月
四 免許の取消又は歯科医業の停止の処分に関する事項
五 その他厚生大臣の定める事項

# 歯科医籍登録

 しかし歯科医師の免許を取ったからと言ってその日から満足な診療を行うことなどは望むべくもありません。臨床研修が必要です。歯科医師法では、この臨床研修に関して以下のように記載してあります。しかし、その条文からも解るように、この臨床研修に関しては法的には努力義務となっています。(ただし、平成18年4月よりの歯科医師臨床研修必修化の予定)

☆ 040223 平成16年度から始まる医師の研修制度では、アルバイト禁止が打ち出された。今まで研修医のアルバイトに頼っていた市中の病院には影響はないのであろうか?

歯科医師法 第16条の2
歯科医師は、免許を受けた後も、1年以上大学若しくは大学の歯学部若しくは医学部の附属施設である病院(歯科医業を行わないものを除く。)又は厚生大臣の指定する病院若しくは診療所において、臨床研修を行うように努めるものとする。

 また、歯科医師は1人でその診療行為をすべて行うことは難しく、パラデンタルスタッフの力を借りなければなりません。デンタルスタッフには歯科医師をはじめとして以下のような職業があります。

歯科医師(Dentist)
 言うまでもなく歯科医師です。診療科としては「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4つが標榜科名となっています(平成15年4月現在)。

歯科衛生士(Dental Hygenist)
 「歯医者さんの看護婦さん」といえば、イメージ分かりやすいと思います。高校卒業後、「歯科衛生士専門学校」へ入学して2年間の課程を終了後、歯科衛生士国家試験に合格する必要があります。予防処置、診療補助業務全般のほか、歯磨きや食事などの保健衛生指導指導、歯石除去などの治療に携わります。現在は2年間修習年ですが今後は歯科衛生士専門学校も順次3年間に延ばされる予定である。

 Internetの掲示板の一部では歯科衛生士の職務範囲が問題となっているところもあります。だからというわけではありませんが、常識として歯科衛生士に業務の指示を行う場合には違法行為とならないように注意しなければなりません。

 しかし、法の世界には「ホワイトゾーン」「グレーゾーン」「ブラックゾーン」が常に存在するものです。あまりにもホワイトゾーンに拘束されず、時としてはグレーゾーンに踏み込まなければ社会人としての活動が不可能なのはどの世界も同じです。そのためにもホワイトゾーンとブラックゾーンを理解しなければならないのである。 歯科衛生士の職務範囲 ・ スタッフルーム

歯科助手・アシスタント(Assistant)
 歯科衛生士の資格を有しない、いわゆるアシスタントです。その業務は多岐ににわたります。しかし、一部の歯科医院では資格のない助手に歯科衛生士の業務を行わせて問題となっているケースもありますので注意が必要です。

受付秘書・医療事務(Receptionist,Secretary)
 たいていの場合、患者さんが一番最初に接するのが窓口業務を担当している「受付」です。診療の予約などのアポイント業務、会計業務、カルテのチェックや診療報酬請求などの医療事務、等をその職務の中心として、医院の顔であり非常に重要な職種です。

歯科技工士(Dental Techinitian)
 その医院の治療の質を左右する上で重要な職種です。以前は院内に技工士を置くことが多かったようですが、最近では技工物を外注に頼り、院内に技工士を置かない歯科医院も増えてきたようです。
 ただ、その医院の診療の内容によってはぜひとも院内に技工士が必要な場合もありますので、院内技工が良いのか、外注技工が良いのかは意見の分かれるところです。 

 通常どの様な職業においても職域の団体が存在します。歯科医師と言う職業においての団体の代表的なものは歯科医師会です。
 歯科医師会への加入は常々議論となることですが、歯科医療は単に診療所で患者さんに向き合って診療行うだけではなく、社会保健事業に取り組むことも大事な仕事です。したがってそういった場合、歯科医師会という職域団体は重要な働きを果たすのは言うまでも無い以上、極力歯科医師会には入会した方が良いのは当たり前のことと言えましょう。

 しかし、歯科医師会の会務や会費の負担が重いという意見があるのと、本来の目的からすると歯科医師全員が加入することが望ましいのであるが、勤務医や夫婦開業の片割れが加入していないことが多いなど、歯科医師個人の入会というより歯科医院の管理者の入会といった現状なのである。  参考:歯科医療と歯科医師会

■ 歯科医師会と独禁法

 平成15年春のSARSの流行を発端として、初期鑑別のため今年はインフルエンザワクチンの接種の需要が多いようである。厚生労働省の依頼により、今年は約3000万人分のワクチンが供給されたものの、品薄となっている状態である。これは供給不足と言うよりも在庫が偏っているのが原因と思われる。それに加えてインフルエンザワクチンの接種費用が医療機関によって大きくことなることも問題となっている。しかしながら、法的な裏付け無しに医師会などが医療機関における予防注射の費用を定めれば独禁法違反となるのである。なんらかの解決法は必要ながらも、難しい問題である。

参考: 医師会の活動に関する独占禁止法上の指針

■ 歯科医師会と歯科医師連盟

 最近話題になっているのが「歯科医師連盟」の存在ですが、どうして歯科医師会の他に歯科医師連盟がいるのでしょうか?
公益法人たる歯科医師会も政治活動は可能です。しかし、政治活動には「政治献金」がつきものです。簡単にいうと、行政から補助金を貰っている公益法人たる歯科医師会は「政治献金ができない」からです。参考

     

3 歯科医師の任務とは

歯科医師法に以下のように記載されています。
第1条(歯科医師の任務)
歯科医師は、歯科医療及び保健指導をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。

それでは歯科医師の義務とは何であろうか?歯科医師法には以下のように記載してあります。

 歯科医師の義務・禁止事項
(1) 診療応召の義務(歯科医師法19条) 
(2) 無診察治療の禁止(歯科医師法20条)
(3) 処方箋交付の義務(歯科医師法21条)
(4) 保健指導を行う義務(歯科医師法22条)
(5) 診療録の作成・保存の義務(歯科医師法第23条)

 歯科医師の業務に関する規則
(1) 死亡診断書の記載事項(歯科医師法施行規則19条の2)
(2) 処方箋の記載事項(歯科医師法施行規則20条)
患者の氏名・年齢・薬名・分量・用法・用量・発行年月日・使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は歯科医師の住所を記載し、記名押印又は署名
(3) 薬剤容器等の記載事項(歯科医師法施行規則21条)
用法・用量・交付の年月日・患者の氏名及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は歯科医師の住所及び氏名
(4) 診療録の記載事項(歯科医師法施行規則22条)
一 診療を受けた者の住所・氏名・性別及び年齢
二 病名及び主要症状
三 治療方法(処方及び処置)
四 診療の年月日

 その他に上記には記載されていませんが、刑法第134条に診療に関する守秘義務があります。(文言には医師としか言っていないが、解釈としては歯科医師も含む) 

まとめ 公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保すること

 従って、歯科医院の中で患者さんの治療を行うだけでなく、校医としての業務、小児健診を代表とされる業務のほかに、社会保健事業への参画と言った様々な仕事が存在するのである。

     
4 歯科医療の対象

 歯科の診療範囲とは、歯牙、歯肉、口唇、頬粘膜、上下歯槽、硬口蓋、舌前3分の2、口腔底、軟口蓋、顎骨(顎関節を含む)、唾液腺(耳下腺を除く)を加える部位とする。
出典・第2回「歯科口腔外科に関する検討会」議事要旨(平成8年5月16日) とされています。一般の開業医においては問題となることは少ないですが、口腔外科の分野では、口腔ガンの手術時において頸部隔清術がその範囲に入るかなど、問題が生ずる場合もあります。
 この点において、上記の解釈は「歯科口腔外科」としての診療科の標榜に関しての診療範囲であり、歯科全般の診療範囲ではないという御意見もあるようですが、歯科診療の範囲を定めた見解が存在しない以上、歯科における一番広い診療範囲を定めた上記見解が一つの目安となることは確かでしょう。

 逆に医師がどの程度歯科医療に踏み込めるかという問題もありますが、歯科医療の範疇には歯科医行為であると同時に医師行為であることが含まれています。例えば、抜歯、齲蝕の治療(充填の技術に属する行為を除く)歯肉疾患の治療、歯髄炎の治療等、所謂口腔外科に属する行為等は医師でもOKです。  医師法に関する疑義解釈

     
5 診療契約とは 

 診療を受けようとする人(患者)は、医療機関の窓口で診療の申込みをします。それでは、診療を申込みそれに対して医療機関が受諾するという診療契約は、家を建てたりする請負契約と何処が異なるのでしょうか?

 診療契約の基本
@ (契約の時点)
 通常は医院の窓口で診療申込書に必要事項を書き込み提出し、医院の受付の係が受け取って診療録に記載を始めた時に契約が成立したと解することができます。もちろん、法的には「申込書」と言った文書は必要ではなく口頭でも有効です。
 保険証を添付して出すときには、すでに保険医と保険者との間で、第三者である患者(被保険者)のために契約が締結されていて、患者はその契約に基づいて請求、つまり受益の意志表示をしたと考えられます。(保険診療契約は現物給付契約)

注意) たとえば薬だけほしいと言った申し出に対して、無診察で処方箋を発行することは、元々「歯科医師法第20条」に抵触し、違法行為を内容とした契約は無効であり、診療契約そのものが発生しない。また診療費の請求権も発生しない。

A (契約によって生ずる債務)
 ところで、診療契約にあたっては、他の契約とは異なり債務の特定が非常に困難であります。通常の取引のいわば固定的・客観的な債務では無く、流動的・可変的な債務であります。診療行為は金銭債務と言うようなものでもなく、家屋受け渡し債務や、単なる労働というものでもない。病状の解明や、その治療といういわば生体を対象とし、刻々変化し、対応しなければなりません。また、非常に巾のある、自由裁量的な要素を含んでいるため、単純に債務の内容を契約締結時から特定できない性質を有しています。
 診療契約は歯科医師(債務者)と患者(債権者)がお互いに協力し合って行うもので、双務契約とも言われています。つまり診療の成り行きによっては互いに債権者と債務者が逆の立場をとることもあります。たとえば、患者側に治療に協力する義務違反、あるいは指示に従わない義務違反があれば、患者側が債務者となり債務不履行を問われる事もあり得るということです。

 また診療費においては、医療上必要な場合には前払いも請求できます。(民法649条)
ただし、これは私費診療には即適応できますが、保険診療において前受金が認められるのか否かは定かでは有りません。たぶんだめでしょう。
 また、予約に関してのキャンセル料も保険診療においては認められないと言うのが厚生労働省の見解のようです。

B (契約の法的性質としては)  
 手術を除いた治療行為についてみると、一定の事実行為、つまり事務の処理をするという意味で委任に準じた「準委任契約」であると解することができます。(神戸地裁竜野支部 昭42.1.25 判決より)
 手術については、一般の診療と異なって契約の範囲も限定されるし、目的もはじめから明確であります。そうなると、事務処理と言うよりも、むしろ仕事を完成するという点に主たる目的があります。ただ成功の要素は当然には含まれません。法的に見ると、このように、「ある仕事の完成を約し」という合意に達した契約を「請負い契約」とみることができます。しかし、家屋を建てるというような、計画的・定型的・固定的ではないという債務の性質から、請負としても特殊な類型と考えることができます。
 上記の様に、診療契約の性質は場合に応じて、準委任、または請負と見ることができますが、その具体的な債務の履行にあたっては現時の医療水準に、すなわち自己の知識・経験・技能をいかし、最大限に努力すべきであると考えられます。その履行に際し、責に帰すべき事由による損害については当然債務の不履行とされるが、結果が生じたということからだけの結果責任は問わないのは言うまでもありません。

C (未成年者の契約)
 患者が行為能力・意志能力を存する時には診療契約の当事者たりうるが、そのような能力を有していない乳幼児・精神障害者などの場合は当事者は親権者、その他の法定代理人であります。
ただ、行為能力を有しない未成年者であっても、医的侵襲の何たるかを理解できる者も契約当事者たりうると解するべきであります。
そうなると、未成年者の行為能力の民法上の解釈との間に差を生じることになるが、他の民法が予想している一般的な取引概念とは異なるので、取り消しうる法律行為に該当しないと考えるのが妥当であります。
 ただし保険診療はともかく私費診療の契約に於いては「保護者の承諾」を取って行った方が良いのは言うまでもありません。(民法第4条より) 

まとめ 診療契約は民法で言う所の準委任契約である

 それでは準委任契約とは何であろうか
# 委任(準委任)契約とは
 委任とは、当事者の一方(委任者)が相手方(受任者)に法律行為をなすことを委託する契約である。(民法643条)
 「法律行為をなすこと」の委託が本来の委任であるが、法律行為以外の事務処理の委託も「準委任」(民法656条)として、委任の諸規定が準用されており、両者を区別する実益は少ない。
 つまり、準委任の場合にも委任の内容が適用されるのです。
# 委任(準委任)の効果
受任者(歯科医師)の義務
(1) 善良なる管理者の注意義務(善管義務) 民法644条
 まず、受任者(歯科医師)は、善良なる管理者の注意義務をもって誠実に委任された事務を処理すべき義務を負う(民法644条)。
 すなわち、受任者においては、一般通常人に要求される注意ではなく、その事務に従事する者(専門家、玄人=歯科医師)の平均レベルの注意を尽くすべき義務があると言うことである。
 また、この善管注意義務は時代(医学の進歩に伴い)と共に進化することもあり、微妙な基準となりえます。
 平成8年1月23日の最高裁の差し戻し判決によると、医療行為における注意義務とは、「平均的医師が現に行っている医療行為とは必ずしも一致せず、医師が医療慣行に従った医療行為をしたからといって注意義務を尽くしたと言うことはできない。」とされています。

参考: 医療水準

 そもそも受任者の負う義務が「結果債務」でなく、「手段債務」であることに対して、受任者側の債務不履行とは、所期の結果の不発生だけでは足りず、当該事務処理にあたり要求される善管注意義務を尽くしていなかったことにより所期の結果が不発生に終わったことまで確認しなければなりません。
 なお、善管注意義務は有償・無償を問わず受任者に要求され、判例は報酬の多少にかかわらず善管注意義務は軽減されないとしています。
 つまり、「保険だから」「治療費が安い」からといっていい加減な治療が許されるものではないと言うことであります。

(2) 報告義務 民法645条
 この報告義務自体は当然のことであるが、特に医療についての委任契約においては、医療内容が高度に専門的であることから、受任者の歯科医師は、症状、治療内容、治療に伴うリスク(手術の成功率・副作用)等につき、事後報告のみではなく、事前に充分な説明(IC)を委任者の患者にすることまで要求される。
 これを根拠にしているのが、「インフォームドコンセント」であり「カルテの開示」である。しかし、インフォームドコンセントはともかくとして、カルテ自体の開示ではなく、診療内容の要約という形で受診者に自己の診療情報の報告を行うことで足りることは言うまでもない。本来、カルテは専門家以外が見ても理解できるようには整備されていず、またカルテ自体の開示を求む受診者においては、報告義務としての要求というより、例えば訴訟に向けたトラブル上の必要性から生じる場合もあるので注意が必要である。 

委任者(患者)の義務
(1) 報酬支払い義務
 診療契約は一般的に有償委任であるから、委任者は約定の報酬(診療費)を支払う義務を負います。
なお、報酬(診療費)は特約のない限り受任者の事務処理(診療)の後に支払うのが原則であります。(民法648条2項)

(2) 有償・無償を問わず、受任者の請求有り次第、委任者は費用を前払いする義務(民法649条)があります。
 # これも普段の診療において問題となることがある。例えば、クラウンの印象時に装着時の費用の前払いを請求できないかというケースである。しかし、私費はともかく保険診療においてはできないとされている。従って、クラウン製作後、受診者の未来院により未装着となった場合の費用は医療機関がかぶらざるを得ない。ただし、保険者の負担する費用については「未装着請求」という形で請求可能である。もちろん、受診者の一部負担分についても請求可能であるが、、、、、この請求については問題も多い。

委任の終了(診療の終了)
 委任は継続的な契約関係であるが、当事者間の高度な信頼関係が契約存続の基礎となっていることから、他の契約類型とは異なる終了理由が設けられています。
 無理由解除権
 当事者間の信頼関係が失われた様な場合、委任契約を継続させることは委任者においても受任者においても苦痛であります。
 この様な事態を想定して、民法651条1項は、両当事者はいつでも理由を問わず委任契約を解除できるものとしています。
 ただし、一方の不利益な時期(たとえば手術中)に解除することは不可能であることは言うまでもありません。

# これは実務上の問題であるが、委任者(受診者=患者)が診療途中で契約を一方的に破棄(歯に被せる型をとったが連絡無しに未来院となるケースなど)するケースなどは日常茶飯事に見受けられることである。もちろんこういった事例を元に委任者がとがめられるというケースはほとんど見られない。しかし、法的には委任者の契約不履行であり損害賠償請求に値するのである。
 巷では契約不履行をもとに委任者(患者)が受任者(医師)を訴えるケースはよくあるが、反対に医師が患者に対して損害賠償を請求できうるケースの方がはるかに多く存在するのである。
 こういった事例が存在して受任者が不利益を受けることが容易に判断できる場合、一般社会では「キャンセル料」などといった概念が契約約款に記載されていることが多いが、そういった契約概念のない行政が作成した現在の医療(特に社会保険医療)においては受任者が自己の権利を主張することは非常に難しいと言わざるを得ない。 

# 診療けやぐの勧め

    
6 歯科診療(保険診療と自費診療)

 歯科診療には一般的に「保険診療」と「自費診療」という区別があります。保険診療は「疾病」に対する診療を目的としていますので、予防や審美目的に対する保険給付は原則として有りません。

(1) 保険資格を持たない人。
 日本においては、皆保険と言われており本来ならば保険資格の無い人は存在しないはずであるが、色々な都合により保険資格を有しない人が存在します。これらの人は、もちろん保険診療を受けることはできません。

(2) その診療が不慮の疾病や事故によるものでないとき。
 典型的な例としては「職務上の事故である労災保険診療」や「第三者行為による傷害(暴行・交通事故等)」があります。

 「労災保険診療」は、主として仕事の業務上による傷害(疾病)に対する診療で、医療保険上の取り扱いとしては自費診療となります。
 「第三者行為による傷害(暴行・交通事故等)」は、殴られて歯が折れた、交通事故で歯が折れたと言う場合に該当するケースで、一般的には保険診療外とされていますが、健康保険法第67条には「第三者行為で保険診療を受けた場合には、第三者に対して保険者が損害賠償請求の資格を取得する。」とあるだけで、保険診療で行っていけないと言う法は有りません。ただし、通達などが出されている可能性も有りますが、確認はされておりません。
 ただし受診者の故意によって生じた負傷などに対しては給付されないことは明文化されています。

(3) 保険診療の規格を越えた診療を望まれる人。
 たとえば、前歯にかぶせる診療は「硬質レジン前装冠」として保険給付されています。しかし、レジンの変色などを理由にセラミックによる治療を希望する場合があります。平成21年8月現在、セラミックによる治療は保険給付外ですので、自費診療となります。

(4) 保険診療で給付されない診療を望まれる人。
 たとえば、審美目的の歯牙漂白・歯科健康診断(療養担当規則21条)などは元々疾病でありませんから保険給付されていません。つまり、自費診療になります。
 
まとめ 保険診療と自費診療が有り、基本的に受診者の希望によります。
 実際には日常の歯科診療の現場において、「保険診療」と「自費診療」が微妙に絡み合っています。「保険」と「自費」の混合診療は一般的には認められていません(成文化された規則は無いとされているが)ので、これらを混同して診療すると「保険医療養担当規則」違反に問われることが有りますので注意が必要です。

     
7 保険診療ってなんですか?

 医療保険制度

 疾病、傷害などが発生したときに、その治療のための医療を提供し、休業による所得の減少・中断を保障する社会保険制度のことを医療保険と言います。わが国では、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険、各種公務員共済組合、私立学校職員共済組合などの被用者を対象とする「職域保険」と、自営業者や無業者などの地域住民を対象とする国民健康保険のような「地域保険」があります。 これらの保険制度に基づいて行われる診療が保険診療です。

 医療保険は勤労者個人や事業主が、自由に契約・加入するものでなく、法律で加入が義務づけられています。

 健康保険への加入は事業所単位で行い、常時5人以上の従業員を使用する個人の事業所や5人未満であっても全ての法人の事業所を強制適用事業所といいます。これに対して個人経営の事業所で飲食店、サービス業などや従業員が5人未満であっても認可を受けて適用されるのを、任意適用事業所といいます。いずれも適用事業所に使用される人(臨時に使用される人などは除く)は、国籍、性別、年齢、本人の意思などに関係なく全て被保険者となりますので、強制的に加入しなければならないとされています。 これらのことを総じて「国民皆保険制度」と言います。
1961年(昭和36年)以来この国民皆保険制度によって、国民全員が何らかの医療保険に加 入する仕組みができています。
それでは諸外国ではどうなっているんでしょうか?アメリカを例に説明します。

 アメリカの医療制度

 アメリカには日本の健康保険のようなすべての国民が平等に医療を受けることができる制度は存在しません。いわゆる公的保険といった場合は65歳以上のシニアを対象としたメディケアと、低所得者プランのメディケアドの2つのみが挙げられます。
 通常は高額な医療費をカバーするために、自分で民間の保険会社や医療組織の保険に加入しなければなりません。民間の保険には企業が団体加入する医療保険のほかに、主に自営業者が加入するブルークロス・ブルーシールド、またはHMOという組織のマネージドケア型保険があります。日本人駐在員や留学生の場合も加入できますが、保険プランには膨大な選択肢があり、医療サービスや保険料にもかなりの差が出てきます。 

まとめ 日本は皆保険制度。
 それでは保険診療を取り扱うのにはどうしたらいいのでしょうか?

    

8 健康保険取り扱い指定医療機関

 保険診療を取り扱うのには、診療する歯科医師が「保険医登録」することと、診療する医療機関が「健康保険取り扱い指定医療機関の登録」をする必要があり、これを二重指定と言います。
 これらを定めた法が「保険医療機関及び保険薬局の指定並びに特定承認保険医療機関の承認並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する政令」である。
 保険医が診療を行う場合には以下のようなケースが考えられます。

 ケースその1 
自院(当然保険医療機関)で、保険医が診療を行う場合。

● 保険で給付されている診療については、保険診療を行わなければならない。
● 保険で給付されていない診療に対しては、私費診療が可能である。しかし、一診療(この基準が曖昧なんですが)において、保険と私費が混在する混合診療は認められていない。
  この混合診療禁止に関しては
99年の何月号だったかの「日経メディカル」に特集されており、その中に【混合診療の禁止を直接うたった法令はない。にもかかわらず混合診療禁止のルールは存在する。これは、1984年の健康保険法改正時に、特定療養制度が新設されて以後、特定療養費の反対解釈として、「混合診療の禁止」ルールが成り立つことがはっきりした。】と言う記載が有りました。

我々歯科においては、現在の治療水準に対して保険で給付される範囲がかなり限定されており、常に「どの様な治療を患者が希望するかを確認」しなければ、トラブルの原因になります。その代表的な例が「白い歯で被せるか」「金属で被せるか」です。

歯科における代表的な私費診療2例を挙げます。
● 前歯に白いセラミックを被せる場合 ⇒ 完全に私費診療。
● 金属でできた総義歯を入れる場合 ⇒ 特定療養費として保険給付相当分は保険給付となり、差額分は私費診療となります。

 ケースその2
他院(保険医療機関)に出向いて、保険医が診療を行う場合。

この場合はケースその1と同じでしょう。

 ケースその3
他院(非保険医療機関)に出向いて、保険医が診療を行う場合。

この場合の診療は保険診療と見なされませんので、保険診療としての請求は不可能です。

尚、保険医療養担当規則 第19条(使用医薬品及び歯科材料)の


2 歯科医師である保険医は,厚生大臣の定める歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴において使用してはならない。ただし,別に厚生大臣が定める場合においては,この限りでない。

については
「2 歯科医師である保険医が保険診療を行う場合には、厚生大臣が保険診療材料として定めた歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴において使用してはならない。ただし,別に厚生大臣が定める場合においては,この限りでない。」

と言うのが現在の実状では無いでしょうか。
 そうでないと、保険医は前述の「金属の総義歯」や「セラミックの冠」による治療を行えない事になり、われわれ歯科医のほとんどが違法行為をしていることになり、行政もそれを知りながら見過ごしていることになります。もちろんこれらの材料は保険材料としては認可されていませんが、歯科診療材料としては認可されていますけど。

これは、法改正が世の中の流れに追いついていない一事例だと思います。

 ケースその4
診療所以外に出向いて、保険医たる医師が診療を行う場合。

● 保険医療機関の診療行為として、所属する保険医が往診(訪問診療)を行った場合には、医療法1条でも認められており、医療機関内で診療行為(あくまでも事務手続き上)が行 われたこととし、診療報酬の請求は保険医療機関で行い、保険上も医療法上も問題は無いようです。

● 保険医療機関に所属していても、その医療機関の診療行為としてではなく、アルバイト等の行為として医療機関以外において診療行為をした場合。
  この場合は、以下の問題が有りそうです。
(1) 医療機関以外での継続して診療行為を行う場合には、医療法 第8条〔開設 の届出〕、の手続きが必要ではないのか?
(2) もしその医師が公立病院の医師である場合には副業禁止規定の問題がありそうです。

それでは、医療は医療機関においてでないとできないんでしょうか?もちろん救急処置などは除外してですが。

医療法の第1条の2(医療提供の理念)に

2 医療は、国民自らの健康の保持のための努力を基礎として、病院、診療所、介護老人保健施設その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等において、医療提供施設の機能に応じ効率的に提供されなければならない。

とあるので、医療機関でなく又患者の家でもない医師の自宅等や学校等で行う行為は違法と見なされるおそれがあります。

 ケースその5
非保険医が保険医療機関に出向いて診療する場合にも、保険診療とは認められません。しかしこの場合は、その保険医療機関の保険医が診療したと言うことで保険請求が行われているのが実状ですので、表面には出てこないようです。

 医療や保険に関しては規則として明文化されていない事も多く、歯科医師会などで口頭で申し渡されただけの規則が一人歩きしているルールも多いのです。
 この他にも様々な条件において保険・私費という区別は常につきまとってきます。
 
まとめ 保険診療は「保険医」と「保険医療機関」の二重指定である。

参考: 保険医療機関の諸届

     
9 保険診療のルール

 保険医として診療する場合には、前述の「混合診療の禁止」を始めとして様々なルールのもとに行わなければなりません。

 事務手続き上のルール
 診療に際しては、「受診者の保険資格を確認(療養担当規則3条)」し「法で定められた様式の診療録の作成と保存(療養担当規則8条・9条)」・「一部負担金を受領する義務(健康保険法43条の8・療養担当規則5条)」がある。

 診療上のルール(基本的保険診療の規則)
 法で定められた材料を使い、厚生大臣の定めた療法で(療養担当規則18〜21条)診療しなければならない。
 中には、旅行中で保険証を持参せず急患で来院するケースも有り得ます。その時はどう対処したらよいでしょうか?保険診療の取扱の本則としては、療養担当規則3条にあるように、患者の持参した被保険者証でその受給資格を確認しなければなりませんが、緊急の場合には保険資格の確認がなされれば被保険者証の確認は必要ないとされています。例えば会社員が会社に発行してもらう証明書などがそれに当たるでしょうか。

# 保険診療の基本的規則

 これらの方法により受給資格の確認ができない場合にはどうしたら良いでしょうか?それは、個々の医院の対処によるところによりますが、自費診療にて取り扱うケースもあるかと思われます。それでは、被保険者証を持参せずに受診した患者に救済措置は無いのでしょうか?健康保険法は44条の2において、やむを得ない場合の保険外診療に対して、療養費払いという救済処置を用意してあります。
 実際、当院においては「無保険で自費診療した患者が、当院の領収明細書をもとに、後に国民健康保険に加入した際に療養費払いを受けた」例を確認しています。
 又保険資格を証明する書類に「被保険者資格証明書」と言うのがあります。これの取扱いにおいては以下のような注意が必要です。

(注意)保険診療として取り扱って構わないが、治療費全額を医療機関の窓口で授受する。よってレセプトによる保険者への請求は生じない。
この他にも、保険診療には様々なルールがあります。

まとめ 保険診療は決められたルールのもとに行わなければならない。

それでは以下に、具体的な保険診療上の事務取扱について記載してみたい。

■ 診療録(通称:カルテ)の作成

(1) レイアウトは決まっておりますが、大きさは決まっていません。以前はB5版が主流でしたが、行政文書のA版化をふまえA4版が望ましいとされています。ちなみに処方箋はA5版と決まっています。

(2) 具体的には、患者情報を記載することを中心とした「1号用紙」と、処置などを記載することを中心とした「2号用紙」があります。

(3) カルテの記載は、原則として「黒又は青のボールペン」とされており、修正するときも「修正液は使わず、=で消す」ことになっており、また記載に於いては行間を空けないようにと指導されています。

(4) 関係法令では「カルテはすみやかに作成しなければならない」とされています。ではこの速やかにとはどの程度を意味するか?具体的な通知文書は目にしたことはありませんが、「24時間以内」としている厚生労働省の見解があると聞いています。

■ 診療報酬請求明細書(通称:レセプト)の作成

(1) レイアウトや大きさなど詳細にわたって決まっています。 

■ 疑義解釈

(1) 保険診療における点数の算定法などは詳細に定められており、その内容は社会保険研究所刊の「歯科点数表の解釈」によってみることができます。しかし、それらの内容は複雑にわたるため、疑義解釈というものがあり、点数改正時などを中心として厚生労働省から正式なものが発表されます。その他にも、各県の審査委員会からだされるローカルルールが存在し、地方毎の点数算定の不公平や不透明の原因となっています。 参考

■ 点数改正

 保険診療の点数改正は原則2年ごとに行われる。最近では平成16年4月に行われた。しかし歯科の主要材料の一つの12%金銀パラジウムは相場による値動きが大きいので、6ヶ月毎に見直される仕組みとなっている。平成16年10月改定でも、平成16年1〜6月の計算基準価格が平成15年7〜12月に比べて10%以上の乖離(10%未満の時は改定は無い)があったとして改定されました。

    

10 医療経済学

 療養担当規則2条の4で、保険医療機関は健全な運営をしなければならないとしています。法に決められるまでもなく、良質な歯科診療を行う上で、その経済的な裏付けと、適切な医療機関運営は見過ごしにはできない重要な事柄です。当然の事ですが、医療機関は一種の事業体ですから一般の事業所と同じに、「収入」と「支出」によって支えられています。
 ここでは医療機関の収入に視点をおいて解説したいと思います。

 医療機関の収入
 医療機関の収入のほとんどを占めるのは医業収入である。その言葉どうり、医業収入とは「医療行為によって得られる収入」であります。
 前述したように、日本は国民皆保険制度をとっており、社会における診療行為の大部分は保険診療で行われています。つまり、医療機関で得られる医業収入の大部分は保険収入であります。それに加えて、歯科においてはその診療の特殊性から自費診療という診療行為が存在し、自費診療収入がある一定の割合を占めています。そして、一般的には保険診療よりも自費診療の方が採算性が良いとされています。

保険診療収入 = 健康保険法を始め、いわゆる公的医療保険による診療収入。
自費診療収入 = いわゆる保険外診療・健康診断と、労災保険・自賠責保険など特殊な保険における診療収入。
雑収入 = 文書料・歯ブラシ等の売却代金・回収金属の売却代金などの収入。

 その他に歯科医師の収入としては、「講演報酬」「原稿代」「学校医の報酬」「3歳児健診などの報酬」「休日当番医としての報酬」などがありますが、直接医療機関の運営に関係するものではないのでここでは割愛します。

 保険診療収入
 医療機関の収入の多くを占めるのが保険診療収入であります。
 医療機関においては、日々の診療において受診者からその都度一部負担金を徴収します。そして、月末になると保険区分毎に集計して、「社会保険診療報酬支払基金」や「国民健康保険団体連合会」を通じて翌月の10日まで(だだし地区により5日〜7日との所もあるが、法の本則は10日である)保険者に請求します。

 その後審査委員会での審査の上、診療報酬が確定し、翌月の月末までに預金口座に振り込まれます。しかし、一部ではあるが審査委員会の決定に疑義が生じる場合があります。この場合は、保険者又は医療機関から再審査請求を行い再審査が行われます。
 つまり、8月の診療報酬は、その一部負担金を除いた額が10月に振り込まれます。ここで注意しなければならないのは、税務上8月分の報酬額は8月末の時点で計上して、10月の入金時に計上するのではないと言うことです。もし、8月分の診療点数に減点などの決定がなされた場合には、その通知が届いた月分で処理します。

 このように、診療報酬の大半は「支払基金」又は「国保連」から纏めて払い込まれますので、その把握は非常に簡明です。それに対して一部負担金の授受に関しては様々な問題が生じます。
(1) 一部負担金は必ず徴収しなければならないか? 
(2) 一部負担金の未収に対してはどうするか? 
(3) 一部負担金は現金で徴収しなければならないか? 各法において、一部負担金の徴収に関する詳細な規定はないが、クレジットカードなどで決済しても問題ないと解されています。
 ちなみに医療費の請求時効は3年であります。

 なお、患者さんが一部負担金を払ってくれないときは保険者に請求可能な場合もあります。

自費診療収入
 前述のように自費診療には、いわゆる保険外診療・健康診断と、労災保険・自賠責保険など特殊な保険における診療等に分類されます。

(1) いわゆる保険外診療(MB冠など)。これは、医院と患者との任意の契約において行う診療であり、各医院の任意の取扱が可能である。その収入の授受は、現金・ローン・クレジットカード等の決済法があり、医院と患者が合意した方法で行われます。しかし、その契約の締結や診療内容によっては、一番未収金(不良債権)として残る場合があり注意が必要です。

(2) 労災保険を直接に取り扱う場合には、健康保険と同じように労災保険の指定医になる必要があります。しかし、現実には歯科の労災指定医は少なく、傷害を受けた人が労災指定医に受診できない例もあるでしょう。その際、医療機関においては通常の自費診療として取扱い、健康保険と同じように療養費払い(労働者災害補償保険法13条の3)で処理しなければなりません。

(3) 自賠責保険については特に指定医制度はありません。これは、交通事故において生じた傷害についての診療で、本来医療機関においては通常の自費診療で診療し、患者に請求すればすむことであります。しかし、実際の診療においては保険会社から診療費が振り込まれるケースが多い。この方法は医療機関・患者・保険会社が合意すれば問題はないが、診断書や診療報酬請求書を直に保険会社に請求する際には患者の同意が必要なことは言うまでもありません。

 雑収入 
 前述したように、文書料・歯ブラシ等の売却代金・回収金属の売却代金などが該当します。
 そのほとんどは現金決済されます。特に、回収金属の売却代金については計上漏れのない様に注意しなければなりません。税務調査の際には「計上漏れ」が無いかチェックされるポイントの一つです。また最近(99年)、金属を回収した会社において、実際には金属を計量しないで見なし伝票を切っていたと言うことで問題になったこともありましたので、注意が必要なことは言うまでもありません。

まとめ 歯科医院の収入の二大柱は「保険診療収入」と「自費診療収入」である。

# 余談ですが、1995年3月20日午前8時すぎ、東京千代田区の地下鉄霞ヶ関駅付近で起きたいわゆる「地下鉄サリン事件においては、周辺の多くの医療機関に救急車などで搬送されました。こういった緊急時においては保険資格はもとより個人確認も行われることなく診療を開始せざるを得ません。そして診療終了後多くの受診者が診療費を払うことなく医療機関を跡にしたという話を聞いております。
 救急隊員、警察官、自衛隊員は公費で運営されているのでこういった問題は起きませんが、特に民間の医療機関はこういった損害をもろにかぶってしまうのです。医療経済をどの様に考えるか国民の皆様方の考え方次第ですが、他の業界と同様に項目毎の収支計算に基づいて医療経済を認識するには、こういった事例を念頭に入れなければなりません。

 例えば、119番に電話すると消防車がすぐ来るという背景には、消防隊員が待機していることが重要です。もちろん待機中は他の業務をを行っているとはいうものの、待機そのものが業務なのです。
 しかし、医療現場においてはスタッフや設備を待機させておくという考え方に基づかないで医療費が考えられています。
 救急用のベッドを多く空かせておけば収支的にはマイナスなのは言うまでもないし、かといってなるべく満床にして収支を高めると緊急時に空きベッドを確保できない結果となる。
 外来診療においても、収支を考えればなるべくユニットが空かないように予約を入れたい。しかしそうした場合、急患への対応が難しくなる。そういった急患を予約の患者さんの間に割り込ませれば、予約の患者さんの待ち時間が長くなる上に、一定のレベルの診療を確保できなくなる恐れがあるのである。

 あちらをとればあちらがたたず、なかなか難しい問題である。
 しかしながら、そういった日常の現象をうまくこなすのも歯科医院の設立者たる歯科医師の技量の一つと言えるかも知れませんね。

■ ところで歯科医院の経営って、そもそも儲かるものなのでしょうか?
 歯科医院の経営はいわば水商売、儲かる医院あれば、さほど儲からない医院ありということで様々ではないでしょうか?しかし、「経営が成り立つ」という基準で考えると、破綻する歯科医院はさほどみられないのです。平成8年から14年までの7年間にわずか110件が認知されているだけです。歯科業界は冬の時代と言われますが、こういった破綻状況を数字で見ると、他の業界に比べればまだまだ守られている世界なのでしょうか。しかし、他の業界と同列に比較して良いものかということについては議論の余地があるでしょう。

 歯科に限らず、日本の医療費単価は諸外国に比べて格段に安く、大体は1/3と言われています。確かに日本における医療に様々な問題が存在し、改善の余地があるのは事実ですが、こういった低単価において医療制度がうまく機能してほうだとは思います。

 ときに知識人の文章に、海外で受けた医療と比較して如何に日本の医療に問題があるということが言われています。これは、カローラに比べて如何にベンツが優れているかという比較対象にしか過ぎないのです。海外産のウナギを使った鰻重よりも高価な国産のウナギを使った鰻重の方がおいしいのは当たり前のことですから。

 医療費の国際比較に興味のある方は「Google」でキーワードに「医療費 海外 比較」などと入力して検索してみてください。

まぁ、日本における医療費総額が現在の国力に比して重荷になっているということを前提にすると、医療費単価を下げて総医療費を削減しようとするのも一方法ですが、疾病を削減して医療費総額を削減した方が国民にとって幸せなことは言うまでもありませんね。単価を下げると、過剰診療という問題が必ず生じますからね。

    
11 医療事故

 医療事故とは、医療に関するすべての事故の総称であります。それに対して医療過誤は、医療事故の中で医療関係者の過失により生じた結果を言いいます。
 医療だけでなく全ての業務において不具合と言った言葉は避けて通れません。99年の秋に茨城県東海村で起きた原子力の臨界事故についても、科学技術庁は原子力事故は発生しないと言う前提で考えていた結果であります。
 現在トヨタ自動車の社長を務めている「張 富士夫 氏」が、1988年にTMMK(トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー)の社長として赴任したときの言葉に以下のようなものがあります。(出典 トヨタの方式 片山修著 小学館文庫)
「現場では、何が起こるかわかりません。僕は何百・何千という現場を見てきていますけど、何もおこらない現場は一つもない。何もおこらないと言うことは、隠しているに決まっている。本気になって、問題点を書き出したら、書ききれないほどあるはずです。人間だって、その日によって調子がいろいろあるでしょう。調子が悪ければ、思うように作業ができないし、ついうっかり何かを忘れることだってあります。・・・中略・・・完璧を期そうと思ったらものすごく原価の高いものになる。・・・中略・・・だから、異常に備えて待ちかまえているんです。異常が出たら、初めて原因を調べる。我々は、原因の後ろに”真因”があると言っています。その真因を追求して、対策をとる。そうしたことを恒久的にやるのが望ましい。そうすると、ラインが一段とステップアップすることです。」

 自動車工場と医療機関とを、同類に考えることは不可能ですが、この言葉の中にこそ真実が隠されているような気がしますし、医療事故の本質もここにあると思います。自動車と違い人間の体は代わりがききません。そのため治療上の不具合は無い方が好ましいしあってはなりません。しかし、上記の文章からも解るように、実際は無いのでは無く表面に出ないと言った方が正しいでしょう。そして表面に出た一部の事例が医療過誤として問題となり、場合によっては訴訟問題まで発展します。

 医療事故に関しては以下のような心構えが必要です。

(1) 医療事故が起こりにくいような診療システムを作成し、それは人的ミスを補うようなシステムが望ましい。

(2) その上で、医療事故が起こることを前提として備えなければならない。そして、見過ごしやすい事は、医療事故を誘発するような患者の行為(指示どおりに薬を服用しない等)を想定して、それに備えなければならない。
 これらの医療事故を防止するための最大のキーワードは「ゆとり」であります。これは「体のゆとり」でもあり「心のゆとり」でもあります。
 「空中の巾50cmの橋は渡れないが、巾50mの橋の真ん中の50cm巾の通路は渡れる。」と言う言葉がある。
これは、地上10階建てのビルの屋上どうしに板を渡して渡る場合、巾50cmの板であれば、足がすくんでとてもわたれないが、巾50mの板を渡し、その板上の巾50cmの通路は難なく渡れると言うことです。
 つまり、49.5m分の無駄が「ゆとり」を生み、結果として仕事の成功率を上げると言うことである。しかし、このゆとりを生み出す源こそ「コスト」と言う言葉である。コストを切りつめては決してゆとりは出ないのである。

まとめ 医療過誤はマスコミで取り上げられている事例のみの、対岸の火事ではない。明日は我が身。安全は50%のゆとりと50%の無駄によって確保される。

■ 医療事故が起きたときにどの様に対処すれば良いのか、また事故に際して必要となる器具や薬剤は何なのか?医学的な見知の見解は専門書に譲るとして、訴訟が起きた場合に裁判の場でどのようなものが求められているのか、「麻酔によるアナフィラキシーショック判決」を御覧頂きたい。

 この判決を見る限りでは、「アナフィラキシーショックが発症した場合に備えて歯科医院で常備しておくべき設備及び薬としては,血圧測定器や聴診器等のモニター及び酸素吸入器(酸素も含む)が必須であり,その他に,輸液セット,昇圧系薬剤,抗アレルギー剤,人工呼吸補助器具等」が必要とされる。

 札幌市立病院の歯科医師研修の医師法違反事件の公判で、厚生労働省の担当者は「スキルのあるものが救命処置をすることはかまわないが、一般的には歯科医師は救急救命処置を行う義務は無い。」などとも言っておりますが、、、、、、、。

■ 参考: 医療事故 ・ 医療事故例 ・ 歯科医療事故例 ・ 医療事故判例集

     

ここからは、保険医療という面から実際の歯科診療について記載したい

12 診療の申し込みと事務手続き

■  保険資格の確認

 受診者が保険医療機関で診療を希望する場合には、やむを得ない場合を除き、被保険者証の提示(健康保険法施行規則45条)をしなければなりません。
 そして、医療機関は被保険者証を確認(療養担当規則3条)しなければなりません。もちろん、現在の日本は国民皆保険であり、原則として皆保険に加入しているはずですから、被保険者証を確認せず見なし行為にて保険診療を開始しても法的に問題とされる事はほとんどありません。しかし、もし事後に保険資格においての過誤が生じた場合には医療機関の責任において処理せざるを得ません。また、被保険者証の確認は、初診時だけではなく毎月の月初め(正確には、被保険者証のカード化を踏まえ、受診毎)に必ず行い、それをカルテに記載するよう厚生労働省から指導がなされています。

 昔と違い、現代では人の移動や転職が多いため医療機関の知らないうちに保険資格が変わっているケースなどは日常茶飯事で、保険資格過誤の原因になりやすいので注意が必要です。
 また、まれに保険証でなく「保険資格証明書」を持参して受診する人がいるがこの場合の取扱いには注意が必要である。この保険資格証明書とは、一般的に保険料の滞納などをしている人に対して、保険証の代わりに保険資格の証明として発行されるものである。 この場合には、保険診療を行っても全額の徴収となります。 参考: 保険資格証明書について

 平成15年の時点で、保険資格過誤の数は月に40万件以上あると言われています。もちろん、この中には医療機関における保険証データの転記ミスもありますが、多くは失職後も勤務時の保険資格で診療していたなどの原因と言われており、不況の影響でその数は増加の傾向にあります。早急に、正しい資格確認のシステムの構築が望まれます。

 その試みの一つとして、保険証が保険資格カードとしてカード化され、政府管掌健保も平成15年10月から、順次個人毎のカード化されることから、そういった不便さも去る程度改善され財布の中に常時持ち歩く時代となろうとしているようです。それにともなって出された通知でも、「保険資格カードが受診ごとに確認する」とされており、今後「月初めに1回確認したからOKといった慣例」も崩れようとしているのである。

# もし保険証を持参しないとき

 保険診療を持参しない受診したときは原則として自費診療となります。しかし、世の中には緊急というケースがあります。例えば交通事故で救急車で運ばれたときなど、保険証を携帯していない場合もあります。こういったやむを得ない場合には保険資格の確認をせずに保険診療を行うことが認められています。しかし歯科診療のどの部分にこういった事例を当てはめるかは見解がわかれ、各医院のマニュアルによるところが多いと思われます。

@ 保険証を持参しないときは自費診療とする。
 この場合は、発行された明細書をもとに受診者は保険者に療養費払いの申請をすることになります。また、次回保険証を持参した場合、最初の日の分の差額を払い戻す必要はなく、保険証確認日より保険診療とし、再診から算定することになります。
A 全く初めての受診者は自費診療とするが、再初診の方は旧保険資格をもとに保険診療を行う。
 この場合、現在の保険資格が以前と同じか、そして保険資格がきれていないかという問題がありますので、速やかに保険証を持参して貰いましょう。一般には特別な理由がないかぎり、翌日持参してもらいますが、それがなされない場合には、無保険だったり、保険資格の変更で保険証の発行途中で持参できないなどの理由が考えられますので注意が必要です。
B 保険証を持参しない方にも無条件で保険診療を行う。
 次回保険証を持参してもらえば問題のないことなので、受診者の利便性を考えてこのような対応をするのも一つの方法です。なお、この場合「保証金」をとる医療機関もありますが、「お金も持ってこなかった」と言われたら、、、、どうしようもないですね。

■ 歯科診療録(カルテ)

 保険医療養担当規則第22条により、保険診療録(カルテ)の様式は定められている。現在ではカルテの大きさは特に定められておらず、A4が望ましいとされているが、以前からのB5でも差し支えはない。 

  診療録の作成の後に診療を行い、最後に会計を行ない、保険一部負担金の授受(健康保険法43条の8)をする。この時計算上10円未満の端数を四捨五入(健康保険法43条の8の2)する。
 会計に際しては、領収書を発行するように、又可能な医療機関においては明細書を発行するようにと言う通知が厚生省より出されている。

 昨今の医療訴訟事例などによると、インフォームドコンセントの重要性と共に、その詳細を診療録に記載する事が求められているので、診療録の記載は今後益々複雑化するものと思われる。

# カルテ作成の基本的なルール

@ 決められた様式のカルテに記載する
A 黒又は青インクなどの消えない筆記用具で記載し、訂正の場合には修正液を使わず、二本線で消して追記する。
B 行間をあけないで記載し、一行について一診療行為を記載する。
C 所見や診療行為など以外(例えば次回の診療予定)などは記載しない。 ⇒ 平成16年4月改定に於いて、「か再診」については「現在の診療状態、今後の予定」などを記載するむね定められたので、事実上このルールは廃止とみなしていいでしょう。
D 診療後速やかにカルテを作成する。速やかにとは一般に「診療後24時間以内」とされている。
E カルテ記載に関しては定められた略称を使うことが可能です。

■  診療報酬請求書

 月々の診療が終わると、支払基金及び国保連に「診療報酬請求書(レセプト)」を提出して、診療報酬の請求をします。

# 基本的な提出書類(平成16年4月現在)

@ レセプト(診療報酬明細書)
A 社保請求書(平成16年4月現在2枚組)
B 国保請求書(各保険者毎に作成し、県によって用紙の色が異なる)
C 国保総括票(県内の保険者で1枚、県外の保険者で1枚作成する必要がある)

 請求書の提出期限は一般には翌月の10日ですが、地域によっては10日前に設定してあるところもあるので注意が必要です。

提出法は、支払基金や国保連に持参する他、郵送(一般には書留速達で送れと言われる)や宅配便の利用も可能であるが、宅配便でレセプト(よくあるのは支払基金などから保険者に送るときであるが)の紛失という話もよく聞かれるので、注意が必要である。なお、以前は取引業者を利用して提出させるということもよく行われていたが、業界団体の申し合わせと事故防止の観点から、現在では行われているケースは少ないと思われる。

# 減点・返戻

レセプトを提出すると、支払基金や国保連で審査を行い、請求内容に不備があると、その内容に応じて「減点」や「返戻」が行われる。もちろん、それらの減点や返戻に異議がある場合には再審査請求をすることが可能である。それらの方法の詳細は地元の支払基金や国保連に尋ねればわかるでしょう。

■  医療費の概算

 では保険医療でどのくらいの収入があるのでしょうか?

 診療点数は、初診料や再診料に代表される「基本診療料」と、ここの処置に対する「特掲診療料」からなる。具体的な診療点数や算定要件は、いわゆる青本といわれる、社会保険研究所刊の「歯科点数表の解釈」を参照頂きたい。また、解釈本としては、いわゆる赤本といわれる、医歯薬出版社刊の「全科実例による社会保険歯科医診療」をはじめ、何冊か発行されているのでそれらを参考にすると良いでしょう。
 社会保険研究所のHP: http://www.shaho.co.jp/shaho/

■ 消費者契約法と医療

 平成13年4月1日に施行された「消費者契約法」であるが、当初は「日本医師会」も「日本歯科医師会」も医療契約になじまないとの見解をだしたものの、その後これに関しての新しい情報はない。しかしながら、法的な裏付けが無い以上、消費者契約法を念頭においた診療契約を結ぶ必要があります。なお、この法の要旨は「契約の取消権」にあります。興味のある方は消費者契約法をお読みいただきたい。
 歯科医療においては、「保険診療と自費診療の問題」「差額徴収」「混合診療」といった場合、この法理念に関係して来る可能性があるので、御注意願いたい。

 たとえば「前歯は保険では治療できない」もしくは「前歯は保険では白いものをいれることはできない」などの事例が代表的であろうか。

     
13 歯科診療の実際

 皆さんは当然ご存じだと思われますが参考までに歯の基本的知識です。
 診療行為には大きく分けて、予防処置・歯内処置・歯周処置・修復処置・補綴処置・外科処置・矯正処置があります。

 歯科医療はハードウェア・ソフトウェア・ヒューマンウェアの3つの要素から成り立っており、その一つが欠けても受診者のニーズを満たす医療は不可能である。これは他の一般社会のサービスと同じであるのだが、ただ一つ医療サービスは数多くの法的制限の元に行わなければならないと言うことである。我々一般臨床医は常日頃から必要処置と保険の制約というジレンマと闘いながら診療を行っているのである。

■ 基本診療

 平成16年4月に生じた、中医協を舞台にした贈収賄事件では、贈賄の主体が日歯の幹部であり、その内容は「か診の算定条件の緩和」であることが物議を醸し出した。この根底には、「歯科初診」と「か初診」というように初診料が二つに分かれている問題があるのであるが、か初診の導入にあたっては、帳尻合わせのように他の特掲診療料の引き下げも行われており、ある一定割合「か初診」を算定しないと、収入源になってしまう現状があるのである。

 点数改定とは、他の業種のように「単に値上げ」と判断できない大きな仕組みが沢山あるのである。
たとえば、コンビニで「弁当とお茶」を10%値上げすれば、その他の条件が変わらなければ収入はその分上昇する。しかし、「お弁当とお茶は一緒に買ってはいけない」とか「一緒に買ったらお茶は50%OFF」とかのルールがあったらどうであろうか?保険点数の世界はまさにそれなのである。

■ 歯科関連の薬剤

 PerやPericoでは処置の他に投薬が必要となることも少なくありません。昔はそんなにうるさくは無かったのですが、平成14年4月の改定を機に、摘要欄に投与薬剤名を記載しなければならなくなったため、歯科適用薬剤でないと保険請求として通らなくなってしましましたので御注意下さい。

(1) 主たる歯科適用薬剤: 抗生剤 ・ 消炎鎮痛剤

 これらの情報は、投薬時における「薬剤情報提供文書」の作成にも役に立つコンテンツである。

 なお、投薬の際の薬袋の購入や、薬袋への薬剤情報の印刷、そして患者情報の管理などには、「ToWa-プロジェクト」からリリースされているアイテムを利用すれば便利です。

■ 予防処置

# シーラントの保持率: 参照データ

■ 歯内処置

# 亜砒酸の使用時の後遺症に対する訴訟でこのような判決がありました。判例は、亜砒酸の使用に対してのものですが、他の薬剤の使用においても同様な注意義務が必要なのはいうまでもありませんので御注意を。

■ 歯周処置

# カンジダ菌除菌による歯周病の治療を行っている歯科医院がある。学術的なEBMはともかくとして、保険診療とのかねあいで混合診療などにならないように注意が必要である。 抗真菌剤を使用した治療について

■ 修復処置

# レーザーによる窩洞形成と充填処置は高度先端治療の認定を受けている医療機関においてのみ選定医療でで行える。保険医療機関で自費行うことは不可である。 

■ 補綴処置

# 補綴物などの保持年数: これは製造物の耐用年数とは違いますので御注意下さい。あくまでも、口の中に存在する平均年数です。たとえば、4番にインレーを入れたが、1年後に5番を抜歯したため4番のインレーを除去した場合などは、保持年数1年となるのでしょうね。

# 補綴物維持管理料: 特定の施設基準の届出をした歯科医院に適用される制度で、一度作製した「冠」や「ブリッジ」を原則2年保証しなければならない制度で、2年以内に不具合が生じた場合には、無料(基本診療料などは算定可)で再製しなければなりません。

■ 外科処置

# 外科処置において、血液飛沫の発生は日常茶飯事であり、感染予防については充分注意が必要です。血液飛沫が目の粘膜に付着して肝炎が感染したという事例もあります。注射針の針刺し事故に加えて、飛沫感染にも充分注意が必要なことは言うまでもありません。その対応としては、「ゴーグルの使用」「口腔外バキュームの使用」などの方法が考えられるでしょう。

# なお、注射器の針刺し事故の防止には「エームセーフ(モリタ)」や「針パックン(うちで使用している自動針抜き保管器)」などを使用することが有効でしょう。

■ 矯正処置

# うちは矯正をやっていないので、よくわからないなぁ〜(^^)

■ 資格外診療

# 平成16年6月現在、某地方にて「アトピー性皮膚炎やがんなど万病の原因は歯」などとの治療が行われているようですが、以前東京でも類似例が発生し、平成16年4月に「傷害・詐欺・医師法違反」などにより、懲役2年6ヶ月・罰金80万円の判決がでていますので十分注意が必要です。
 またNet上の掲示板などにおいても、衛生士の職務範囲を論じていることが時々見受けられます。その内の大きなポイントの一つが歯科衛生士の職務範囲です。
 歯科衛生士の職務範囲は、主として歯科衛生士法第2条で扱われています。たとえば、「一 歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物及び沈着物を機械的操作によって除去すること。」をもって、歯科衛生士の職務範囲を狭くとらえているケースが多いようですが、「2 歯科衛生士は保健婦助産婦看護婦法第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、歯科診療の補助をなすこと業とする事ができる。」における、診療補助をどう解釈するかによって、その業務範囲は流動的なのです。

 例えば、看護師が保健師助産師看護師法、第5条この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」をもとに注射などの医行為(正確には相対的医行為)を行っているのと同じなのです。つまり、間接的歯科医行為のどの程度まで合法的に行えるかという判断で、それらは衛生士という資格のみならず、経験年数や習熟度などによって流動的であるとされています。 参考: 歯科衛生士の業務範囲

一般社会通念によると、医行為とは「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とされている。これは判例としても「最高裁判所昭和30年5月24日」であきらかにされていますが、直接的または間接的医行為(歯科医行為)とはどのようなものであるかは、こちらを御覧下さい。

■ 医療用具

# 私たちが実際に診療を行うときに使用するものに「医療用具」があります。医療用具とは、薬事法第2条第4項で、「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている器具器械であって、政令で定めるもの」とされています。しかしながら、薬事法では医療用具の製造や販売について規制しているだけで、実際の診療においてどのような医療用具を使うべきか、又医療用具でないものを使っては行けないのか?などの疑問には応えてはくれません。
 例えば、口腔内カメラとして売り出しているものの中にも、医療用具の認可をとったものと、認可をとっていないものがあるのです。これは非常に紛らわしいのですが、理論的には「医療用具の認可をとったカメラ」では診断を下すことが可能だが、「医療用具の認可をとっていないカメラ」では、診断を行うことはできず、単なる資料収集や患者さんへの説明などに限定されることになります。
 その診療が、保険診療となるともっと複雑になります。たとえば、薬事法の承認を受けていても、それを個人輸入した場合などは、自費で使うのは可能だが、保険診療で使うことはできません。 参考

 また、こういったこともあるでしょう。「外科用のピンセットの代わりにホームセンターから買ってきた一般のピンセットを使う」「咬合紙の代わりに事務用のカーボン紙を使う」「印象用のシリコンの代わりに、工業用のシリコンを使う」。
これらに関しては、薬事法は関与していません。しかし、法は専門家たる医師・歯科医師がその専門性において充分な安全知識を持って医療を行っているということを期待し、そして前提としています。従って私たちも、そういった期待を裏切るような行為をしてはいけないのです。

 なお、平成17年4月から、改正薬事法が施行され、「医療用具」という名称が「医療機器」に変わりますので御注意下さい。

■ 混合診療

# 混合診療とは、「一連の診療の中に保険診療と私費診療が混合されること」で、たとえば「保険のレジン床総義歯を作製したが、その中の一部の人工歯を自費で金歯にした」などが代表的であり、診療上の禁止事項とされています。

     
14 診療情報の取り扱い

 現在の診療現場では急速に情報のデジタル化が進行している。当院が開設された1984年頃は、やっとレセプトのOA化が一般化し始めた頃で、PCもまだやっとIntel286の時代で、もちろんOSはMS-DOSであった。
 しかし近年PCの性能の急速な向上と低価格化によって、歯科医院内には1台のみならず複数台のPCが稼働していることも珍しく無くなって来た。それに加えて、患者の権利意識の上昇や診療情報(カルテ・レセプト)の開示、そして診療時のIC(インフォームドコンセント)等、診療情報の有効且つ合理的な利用は今後の課題となっている。

 デジタル化の対象と考えられる診療情報とは?
 一般的に歯科医療情報(歯科医院の運営に必要な情報を含む)の内、デジタル化が可能なものとしては以下のようなものが考えられる。

● 患者予約簿

 以前はアポイントメント簿として紙の予約簿で管理しているところがほとんどであったが、最近ではレセコンに予約機能が組み込まれていたり、Internetやi-modeを利用して予約することができたりと、様々な方法がとられている。御興味のある方は、検索サイトで「歯科 予約 携帯」などのキーワードで検索してみてはいかがでしょうか。

● レセプト情報(通称レセコン)

 今までリリースされていたレセコンソフトに加え、最近では安価なソフトも沢山リリースされており選択肢が拡がっている。しかし、レセプトには点数改定と県毎の対応といった面倒な側面があるので、レセコンの機能や価格に合わせてサポートが重要なファクターの一つとなっている。

● カルテ情報(電子カルテシステム)

 最近では、カルテをレセコンを使って作成している方も多くなっています。

● デジタルX線撮影装置
● 口腔内写真を中心とする画像情報
● 臨床検査情報
● 技工指示書
● 院外処方箋
● 診療情報提供用紙
● 診断書・見積書等の書類など
● 材料の発注等
● 税務会計に関する情報
● 給与・年末調整・源泉徴収・出勤簿等の労務関係情報
● FAX・電話などの通信手段
● その他の院内情報

参考: 医療情報の電磁保存

■ カルテの開示

 最近カルテの開示と言うことがよく言われているが、はたして法的に医療機関にカルテの開示義務はあるのであろうか?カルテの開示を求める論旨として、民法第645条〔受任者の報告義務〕をあげることがある。しかしながら、この報告義務は医療契約だけでなく弁護士や税理士、その他の委任業務に於いて広く存在するものである。しかしながら、それらの場合報告書の提出を求めることはあっても、業務上作成した内部文書までの提供を求めることはない。それと同様に、医療現場に於いても診療に関する情報提供(口頭か文書かはともかくとして)は必要であろうが、カルテを強制的に開示しなければならないという理論は成立しない。
 なお、カルテの所有権や開示権について東京高裁昭和61年の判例では「患者には所有権も開示権も無い」としている。
 しかしながら平成17年4月1日の個人情報保護法の施行により事実上カルテの閲覧は解禁されたと解釈されます。

参考: カルテは誰のものか? 東京高裁昭和61年の判例

■ 個人情報保護法の観点から

 なお、平成15年5月31日に「個人情報保護に関する法律」が制定され、平成17年4月1日に施行されます。この法によると、5000件以上の個人情報を取り扱う事業者は法の対象となり、ほとんどの歯科医院はそれに該当すると思われます。それを踏まえ平成16年9月に厚生労働省から「カルテの原則開示」に関する素案がだされました。 個人情報保護法と医療のFAQ

個人情報保護法によると、カルテの開示をはじめ対象となるのは、5000以上の個人データを有している事業所(医療機関)が対象とか。
5000より上か下かは大きな分かれ目のようですが、うちのレセコンの患者番号はとうに5000番を越えています。
なお厚生労働省のガイドラインでは5000以下の医療機関でも努力義務を課しています。

このままでは個人情報保護法の対象事業所になってしまう。
かといって何年も未来院の患者登録を削除しようにも、うちのレセコンでは登録削除が不可能である。

ちなみに、医科の平均カルテ保有数(登録患者数でなくあくまでもカルテ所有数?)は1医院あたり6000、歯科は4800とか。
ただし、この辺の数字の意味はよくはわからないのだが。

 なお、私たちの学術研究において、患者情報を取り扱うのは常時伴ってくることであるが、平成17年4月の個人情報保護法を踏まえて、それらの取扱いには注意が必要である。 

     
15 歯科医療管理

 歯科医師の勤務先

 歯科医師になって思うことがある。それは勤め先が少ないと言うことである。
医師であれば、開業以前に「公私立の多くの病院」や保健所などに代表とされる行政機関、そして企業などの研究部門といった勤務先が存在するが、歯科医師に於いてはそれらの勤務先はほとんど無いと言っていいにひとしいのである。

 従って最終的には開業するという予定で卒後の研修をする人が多い。しかし大学病院を除けば研修の場もけっして多いとは言えない。そして研修の目的だけでは無く、多くの歯科医師は開業時の資金の一部の捻出のために働かなければならないのである。なぜなら、一部の資産家の子弟を除いて、開業時に必要な資金の全てを借入金でまかなうのは難しく、ある程度の自己資金が必要なのである。

 では勤務医でどのくらいの収入を得られるのであろうか?様々なケースによって大きく別れるのであるが、以下のHPで紹介されている数字が一つの目安になると思われます。
# http://www.barton.co.jp/
# http://www.j-dol.com/

■ 医療器具の滅菌

 タービンのハンドピースや根管治療用のなどがどのように滅菌されているか?そしてどのような対処法が適切なのか難しい問題である。
しかし、滅菌消毒は医療行為の基本であり、それは患者さんを守ると同時に私たち医療関係者をも守る重要事項であると考えなければなりません。

 とはいうものの、オートクレーブなどによるタービンのカートリッジの消耗もバカにならないのも事実です。国際比較をしても法外に安価な日本における保険歯科診療単価の是正無しに厳密な対応を期待することもならないのである。

 ちなみに、国会でタービンのハンドピースの滅菌に付いての質疑が行われていますので御参考下さい。 参考

■ 医療廃棄物の処理

# 医療廃棄物(感染性廃棄物)の処理にあたってはマニフェストを発行し、当該年度分の実績を翌年の6月30日まで、管轄機関に届け出る必要があります。なお、管轄行政機関とは、県によって異なりますが、「保健所」などが該当します。

参考: 医療廃棄物の処理

■ 抜去歯牙の利用

歯科医院では院内や講習会での使用、そして歯科大学生への提供のために抜去歯牙を保存しておくことがあるが、この様な利用においては患者さんの同意が必要なのは言うまでもない。「抜去歯牙の研究などへの利用について」参照
なお同意をとる場合、口頭でも法的にはいいのですが、後にとらぶった時のために文書でとっておくことが望ましいと思います。

     
16 歯科医院とパソコン

  歯科医院のおけるInternetやパソコンの利用法としては以下のようなものが考えられる。

■ 業界内の情報交換

(1) Webの利用

 開業医は意外に孤独である。歯科医師会や大学の同窓会などを等して歯科医師間のつながりはあるものの、意外に狭い情報しか入って来ないものである。他の医院の給与水準、どの様な診療を行っているか、どの様な機材を持っているか、など様々な疑問が生じる。このような情報を得るためにも、Internetは重要な情報源となり得る。

 その他にも歯科関係の情報サイトはたくさん存在します。それらを捜すにはGoogleなどでキーワード検索するのも良いが、歯科関係のサイト集で項目毎にアクセスするのも一方法である。歯科関係の検索サイトとして有名なのが、DENTAL NET SURFINGである。

(2) メーリングリストの利用

 歯科医師間の情報交換として利用されているのがメーリングリストである。歯科業界のメーリングリストは多く存在するが、日本一の規模を誇り、メジャーと言われているのが仙台市の沼田先生が主催しておられるDML「Dental Mailing List」である。
 その他にも沢山の歯科関係のメーリングリストが存在する。

(3) メールマガジン(メルマガ)の利用

 メールマガジンとは、Internetのメール機能を利用してニュースを配信する一手法である。メルマガのサイトとして有名なものの一つに「まぐまぐ」がある。ここで「歯科」又は「歯」と入力して検索すると、多くの歯科関係のメルマガが存在するのがわかる。

■ 歯科医院の管理業務支援

(1) 会計

 歯科医院の業務に於いてレセプトの作成とともに重要なのが帳簿の作成と決算申告の業務である。以前は紙の帳簿に記載して集計したものが、現在ではパソコンの会計ソフトを利用することによって、簡単に迅速にその業務を行うことが可能となった。

(2) その他の管理業務

 院内掲示のポスターや「補管」や「薬情」、「か診」の文書など、パソコンを使って作成管理すれば便利なのは言うまでもない。しかし、それらの書式を一から作るのは面倒なものである。そういった時には以下のような、一般にリリースされているものを利用するのも一方法である。

# 参考: ナルコーム社の文例達人

 また患者情報の管理にも有用なのは言うまでもない。

# ToWa-ProjectのDental_Helperシステム

(3) 歯科医院のホームページ

 最近ではホームページを開設している歯科医院も増えてきてはいるものの、他の業界と比べて決して多い割合ではない。しかし、他の業界においてホームページを開設している企業は大企業中心であることも事実であり、零細企業がほとんどである歯科業界としてはこんなもんではないかと思われる。また、ホームページ開設の効果であるが、歯科医業のマーケットは比較的狭いことを考えると集患効果はさほど認められないということも言える。

■ 歯科医院の診療業務支援

(1) レセコン

 歯科医院にとって避けて通れないのが毎月のレセプト(診療報酬明細書)の作成である。もちろん手書きで作成することも可能ではあるが、枚数が多くなるとその業務は繁雑となり相当のストレスである。こういった場合にはレセコン(レセプトコンピュータ)の利用が有用である。

 レセコンには歯科医師会がリリースしているもの、歯科関連業者がリリースしているもの、コンピュータ関連業者がリリースしているものなど様々存在し、価格もピンからキリまで存在するといっても良い。従って、レセコンの選択に於いては自院のレセプトの枚数など総合的に勘案してコストパフォーマンスに優れたものを選択する必要がある。

 その中で注目すべきものは新潟県で行われているシステムである。これはデータセンター方式で、各医院から入力された診療データはデータセンターで一元管理され、レセプトの印刷から提出まで行うものであり、中には開業以来紙のレセプトを見たことが無いという先生もおられるようである。
 最近(平成15年11月)の情報ではこれをASP方式に進化させ、より安価でナローバンド環境でもストレス無く使用できるようにするシステムを考えているようである。千葉県歯科医師会でリリースした安価なレセコンとともに、今後目を離せないシステムである。

# レセコンの普及率(参考:医療機関数/平成15年)

# レセプトオンライン請求: 歯科でも平成21年10月(9月診療分)からオンライン請求が可能となります。

(2) プレゼンテーション

 インフォームドコンセントの流れを受けて、チェアサイドにおける患者さんへの説明は、実際の診療行為に加えて重要な業務の一つである。もちろん、その方法は多種多彩であるが、昨今では開業当初の歯科医院の設計のDefaultとして院内LANの配線を加えることが多いようである。

 そういったことを踏まえパソコンを使ったプレゼンテーションとしては以下のようなシステムが考えられる。

(a) LANをもとに各ユニットにパソコンを配置したシステム。
(b) ノートパソコンなどをユニット間で移動してStandAloneタイプとして使用するシステム。
(c) サーバのデータをAirBoardに代表されるInternetTVで受信して表示するシステム。
(d) PDAの利用。

 (a)は一番高機能であり、大規模歯科医を中心として今後導入されるシステムといえるでしょう。この方法では、単なるプレゼンテーションに留まらず、デジタルX線、電子カルテ、口腔内画像などを一元管理することが可能である。
 しかし、ユニット全てにパソコンを設置するとコストがかかるうえ、パソコンの保守管理といった負担が増えるもの確かである。

 (b)は比較的安価にでき保守を要するパソコンの台数も少なくなるので負担は小さい。しかし、チェアサイドで患者さんからの視認性の高い場所にパソコンを移動するとなったとき、意外にそういった場所は無いものである。またノートパソコンをモバイルで使用する時には、バッテリィの保持時間に気を配らなければならないのも確かである。

 (c)はサーバの構築やコンテンツの作成を自分でしなければならないという面倒がある。そしてパソコンとは異なり、表示できるのはWeb画面に限られるという問題もある。また、AirBoardを使用した経験によると表示が重いといったストレスを感じる次第である。

 (d)は院内はもちろんのこと出先でも使えるといった有用性がある。もっとも、出先でのプレゼンはプロジェクタなどを使用して、一度に多くの人たちに対して行うことがほとんどであり、そういった意味ではPDAの出る幕はない。
 しかし、チェアサイドにおけるマンツーマンのプレゼンにはうってつけの製品であり、起動も瞬間で、バッテリーの保持時間もノートパソコンに比べて非常に長いのである。

     
17 歯科医院の人事・労務

 歯科医院において診療はもちろん重要である。そしてレセプトの請求や決算申告も重要である。しかし、意外に見落としやすいのは「人事・労務」である。歯科医院の業務は基本的には労働集約型であり、歯科医師はもちろんのこと、優秀なスタッフを抜きには運営できないのである。そして、歯科医院のスタッフのほとんどは女性であり、雇用上結婚や出産といったイベントを乗り越えて使用しなければならない。

 どういったスタッフを雇用するかは、それぞれの歯科医院の管理者の方針によるところが大きく分けて以下の二タイプがあるようである。
(1) 熟練したスタッフをそろえるという方針で、この場合は必然として職員の勤続年数も長くなり、人件費もかさむようになる。
(2) 新卒または若年者のスタッフをそろえ、結婚などを期に入れ替えていくという方針で、この場合は必然として勤続年数も短く平均年齢も低くなる。

 では歯科医院ではどういった方法でスタッフを確保しているのであろうか?
やはり昔ながらのハローワークといった方法が主流のようである。
ちなみにどの様な求人がでているか、そして同じ地域における他の歯科医院の求人条件はどのようなものであるかは、仕事情報Netで検索してみれば大体はわかるであろう。

参考: 雇用契約時の注意

■ 従業員を雇用したときに必要となるもの

 (1)源泉徴収義務者
 1人でも従業員を雇用していると源泉徴収義務者となり、月々の給与から所得税の源泉徴収を行い、翌月の10日まで納付しなければなりません。
 ただし、歯科医院は零細事業所が多いので、こういった事務の繁雑さを避けるため、常時の従業員が10人未満の事業所は源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を所轄の税務署に提出することによって、7月と1月にまとめて支払うことができます。
 昔のことで忘れましたが、歯科医院の開業時に税務署に開業届を提出すると、源泉徴収義務者番号を交付されたような気がしますので、特別の手続きはいらなかったと思います。

 (2)労働保険
 従業員を雇用すると労働保険に加入しなければなりません。歯科医院に限らない話ですが、零細事業所では労働保険に加入していないところもありますが、本来は任意加入ではありませんので違法行為となります。
 この労働保険の加入手続きは、ハローワークで行うことができますが、保険料納付の実務上面倒と感じる方は社会保険労務士に委託したり、労働保険事務組合を利用すれば便利です。
 労働保険事務組合は地域の商工会や歯科医師会で設立しているところがあります。ちなみに保険料ですが歯科医院を含めた一般の事業所では、
保険料総額=労災保険料+雇用保険料
労災保険料:給与総額の 5/1000(全額事業主負担)
雇用保険料:給与総額の 17.5/1000 うち事業主負担 10.5/1000 労働者負担7/1000 となっています。 ← 年ごとに変更されますので最新のデータを御利用下さい。

 労働保険について概要を以下に記載しますので御参考まで。

# 労働保険(雇用保険+労災保険)は従業員を1人以上雇用する場合には必ず加入しなければならない。
# 労働保険に加入するには
(1) 社会保険労務士に手続きを依頼する。
(2) 労働保険組合に委託する。これは歯科医師会や商工組合でやっていることが多いです。
(3) 職安(ハローワーク)で自分で手続きする。
# いつ加入するか?
 従業員を採用時に手続きを行います。基本的には開業と同時と言うことになりますが、例えば16日から開業するの準備として1日から従業員を雇った場合には1日に手続きを行います。

 労働保険制度(制度紹介・手続き案内)厚生労働省

 (3)健康保険
 原則的に常時5人以上の従業員を雇用している事業者は健康保険法における健康保険に加入しなければなりません。
しかし5人以下の歯科医院においては「市町村国保」または「歯科医師国保」に加入することが通例で、歯科医師国保には、都道府県単独の歯科医師国保や栃木県に本部のある全国歯科医師国保が存在します。

 (4)年金
 原則的に常時5人以上の従業員を雇用している事業者は厚生年金に加入、それ以下の零細歯科医院は従業員が個々に国民年金に加入するところが多いと思われます。
 厚生年金は1/2の事業主負担がありますが、国民年金では事業主負担が無いため負担軽減と考える考え方もありますが。福利厚生の考え方から国民年金保険料の一部を手当てとして給与に加えて支給する方法もあり、従業員の雇用条件の向上には有効な方法と思われます。

 従業員使用上のコツ: これはなんと言っても「相手の立場にたって考える」ということでしょう。たとえば、休みもなく賞与も退職金も労働保険も無い職場にあなたは勤める気になるでしょうか?

参考: 従業員の採用・退職

■ 歯科医院の宣伝広告

 歯科医院の広告は、医療法第69条〔医業等に関する広告の制限]で表示可能な項目が厳密に定められている。詳細は、医業広告規制の緩和(平成14年4月)を参考に頂きたいが、今回「専門医の資格」「予約・休日診療・在宅診療の実施」「医師又は歯科医師の略歴、年齢及び性別」などの記載が認められるようになりました。
 しかし、現在に於いても詳細な制限があるのは事実で、例えば「インプラント・審美歯科・補綴科」といった記載は認められておらず、また住所の記載や住所を判別する地図の記載などは認められているが歯科医院の建物の写真などの掲載は認められておらず、広告を出す際には充分に注意する必要があります。その際はできれば保健所などに問い合わせた方が良い場合もあります。
 なお
医療機関が関連団体使ってう回広告を行ったとして問題になるケースもありますので注意が必要です。

 InternetにおけるHPの公開は医療法における広告規制の対象となるかということであるが、現在では対象とはならないとされています。

    

18 歯科医院のセキュリティ

 歯科医院のセキュリティには大きく分けると以下のようなものが存在する。

■  診療上のセキュリティ
 主として医療事故や医療情報の漏洩に関して 参考: 患者情報の漏洩 

 平成16年3月に北海道で、「いわゆる自賠責・任意保険における診療」に対して、医療機関の情報漏洩の疑いとして問題になった事例がある。それは、交通事故などで受診し自賠責などを使用して診療を受ける場合、診療報酬の請求や診断書をはじめとした医療情報のやりとりを、医療機関と保険会社が直接行い、かつ患者の同意を得ていなかったということである。
 もともとこういった場合、医療機関と受診者の間に「診療とそれに対する報酬の支払い」といった関係が存在し、受診者または保険契約者と保険会社の間に「保険金の請求」といった関係が存在することとなる。従って、保険会社と医療機関の間で直接事務処理が行われる場合には、受診者の委任状や承諾書が必要なのは当たり前の話なのである。

■  院内におけるセキュリティ
 歯科医院の防犯などを中心として 

■  院外を含めたセキュリティ
 対外的な事例を中心に 

■  パソコンのセキュリティ
 パソコン及びネットワークのセキュリティを中心に。

     

19 歯科医院の開業

 今時、開業なんかしない方がいいですよ。とは言っても、歯科医師は勤め先がないからなぁ〜。もし求職中の歯科医師はこちらで検索してみたらいかがでしょう?
 というわけで、開業したらどういったことが必要かはこちら

     

20 歯科医院の会計

# まず、開業時は当たり前として、何年かおきに設備の更新という問題が生じます。こういった場合、「自己資金」「借入金」「リース」といった方法で資金調達を行いますが、どの方法が一番良いか?それが問題です。

■ 水道光熱費
 
水道光熱費とは、歯科医院運営に必要な「電気料」「水道料(上下水道料)」「ガス代」「暖房用灯油代」などである。どの程度のコストがかかるかは、その歯科医院の規模や地域によるが。

■ 源泉所得税の納期の特例

 零細歯科医院では利用しているところが多いとは思いますが、つまり、従業員の源泉税を1月と7月の年2回まとめて払うことができる特例です。これを利用しないと毎月支払う必要があるので事務が繁雑になりますね。

★ 歯科医院の会計 ・ 会計の情報館

     

21 歯科医院の法務

# 法には「趣旨」「文言」「運用」の3つの要素がある。違法行為などを論ずる場合には法の文言をもとに行うのは当たり前のことであるが、時に
は文言に書かれていない法の趣旨に基づいて行動しなければならないことも多いのである。

例えば歯科医師法にたとえると以下のようになる
「趣旨」:歯科医療という危険行為において国民を保護し、また国民の健康な生活を確保する目的
「文言」:各条文
「運用」:歯科医師法施行規則、歯科医師法施行令、厚生労働省通知

法の趣旨と文言の関係を考える時の代表的なものが、刑法第134条第1項の守秘義務である。

第134条(秘密漏示)
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産婦、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったこ
とについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

ここには「医師」という文言はあるが、「歯科医師」という文言はない。
しかし、これをもって歯科医師には守秘義務が無いと解している人は少ないであろう。
これは、刑法が「医師法」「歯科医師法」で明確に両者が区分される以前に制定された時の文言を引きずっているためで、法の趣旨としては医師・
歯科医師に平等に守秘義務を課しているものと思われる。ちなみに、日本における歯科医師免許の始まりは明治16年に「医術開業試験規則」において、あらたに「歯科医籍」が設けられ、明治39年に「歯科医師法」が制定されたことによって確定されたとされるのだが、、、?

(参考)
刑法の制定 明治40・4・24・法律 45号
歯科医師法の制定 昭和23・7・30・法律202号

ちなみに刑法は「〜してはいけない」と定めたものではなく「〜したら、〜の刑に処す」と定めたものである。しかし、これらのことから反対解釈と
して「〜してはいけない」という法の趣旨が存在するのである。たとえば、「人を殺してはいけない」という法は無いが「人を殺したら、〜の刑に処
す」の反対解釈として「人を殺してはいけない」という事実上のルールが存在するのである。

 医療現場でよくいわれる混合診療の禁止も同様である。
つまり、1984年の健康保険法改正時に、特定療養制度が新設されて以後、特定療養費の反対解釈として、「混合診療の禁止」ルールが成り立つ
と言われている。

なお、2004/07/11の厚生労働省保険局の医療課長の講演で「保険と保険外を組み合わせる混合診療は、(特定療養費制度ができた)
1984年にすでに解禁されている。」とし、特定療養費制度を「混合診療」と明確に認定しているのである。従って、今後は「混合診療の禁止」では
なく「(特定療養費制度をもとに)許可されたもの以外の混合診療は禁止」と表現を改めた方がいいのかもしれない。

★ 法律の情報館

     

99 Dentistのワンポイント

# 保険診療で、合法的に、良心的な歯科医療を試みるのは経営上大変な努力がいる。
# 歯科医師になったら、大学ではあまり教えない、「カルテの書き方」「保険点数」について勉強した方が良い。
# 歯科医師は、必ずしも保険医になる必要はない。
# 弁護士や税理士と違って、歯科医師の歯科医師会への加入は任意である。
# 歯科医師免許の更新制度は、平成16年4月現在ない。
# 医薬品の零売は禁止(平成17年4月 改正薬事法)
# 保険診療と保険外診療を取り扱う場合には混合診療に注意しましょう。
# 酒酔い運転に注意: 酒酔い運転で交通事故を起こすと、場合によっては医業停止になるので注意。

      

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